前回更新してからはや5ヶ月
あっと言う間に半年が終わって行きます、、、、、、、、、、、
その間、いったい何をしていたんだろう????
と思うこともありますが、こうしてどんどん加速度的に歳を重ねて行くのですね〜。
今日は昨年導入したリーグル社のVZ-1000のお話を致します。
最近、地上型のレーザースキャナーもスピードが飛躍的に速くなって、1スキャン1分足らずで計測が完了する物もあり、取得できる点数も膨大な量になって来ました。
そうなると、事実上ターゲットを置いてデータをマージする事が現実的ではなくなり、私が20年前から行っている形状合成と言う手法を取らざるを得なくなって来ます。
私が行っていた形状合成は、ターゲットが無いからと言うより、よりレーザースキャナの理論誤差に近づける為に、ターゲットの測量誤差や計測の微細な誤差を打ち消す為に行っていましたが、現在ではターゲットの数を最小限にする為に形状合成を行う事が多くなりました。
リーグル社のVZ-1000も、通常の1スキャンは30秒程で完了し、形状合成は制御するソフトウェアにデフォルトで搭載されていますので、1日400スキャンなんて言う事も可能なのですが、後処理を考えると、、、、、、、
地上型レーザースキャナが高精度になり、計測可能距離もライカから1000mを謳うモデルが出きて、ロングレンジは独壇場だったリーグルの座が危うくなってきた様に感じますが、リーグル社のスキャナは根本的に考え方も造りも違うので、所有すればする程、手放せなくなってしまいます。
そこで、リーグル社のVZ-1000の特徴的な機能を紹介させて頂きます。

これはVZ-1000で計測したダムのデータです。
データが取得出来ていない黒い部分はものの影になっていた部分になります。

次にこれはFARO社のX330で計測したデータです。
ほぼ同じ位置から計測しました。
この2機種、VZ-1000はタイムオブフライト、X330は位相差式になりますが、詳細を見るとその違いが良くわかります。

これはVZ-1000のデータになります。
手前の手すりがしっかりと計測されており、手摺の陰になっている部分が格子状に抜けています。

次にこれがX330のデータです。
手摺は殆ど計測されておらず、その後ろのダム堤体も手摺の部分が格子状に抜けるはずですが、白く囲った部分は全く計測できていません。
これは、位相差式であるが故の現象で、複数の周波数の違うレーザーを照射して、戻ってきた波形で距離を測っている為、綺麗な形で帰って来なかった波形はノイズとしてキャンセルされてしまうので、色んな物に当って帰って来たレーザーはデータとして取得しないのです。
これは表面の状況や色によっても大きく左右されます。
X330で計測を行っていて一番困るのが、近距離で当然計測出来ていると思っていても、後からデータを見ると抜け落ちている事があります。
VZ-1000はタイムオブフライトなので、レーザを照射して帰ってきた時間差で距離を認識しているので、この様な事がないのです。
タイムオブフライトはレーザを照射して帰ってきた時間差で距離を認識するのですが、葉や枝等をかすめながら地面に到達して戻って来ます。
この時、葉に当って戻って来た距離を正とするのか、最後に当った地面のデータを正とするのかは機械は判断してくれません。
そこで、タイムオブフライトには、ファーストモードとラストモードと言うモードが装備されており、地面のデータをより多く取りたい場合は最後に戻って来た距離を正とするラストモードで計測し、構造物等の角を計測したい時は、構造物等に当った最初のデータを正とするファーストモードで計測します。
これらのモード選択は計測を行う前に決定するのですが、VZ-1000は1発レーザーを発射して物にぶつかって反射して来た距離を全てデータとして取得するのです。

これはVZ-1000を制御するソフトウェアの一部分ですが、エコーズと言う部分に
シングル、ファースト、アザー、ラストと4種類のエコーにチェックが入れられる様になっています。
1スキャンすると、データはこの4種類に自動的に分類されて格納されるのです。

これはファーストエコーで複数の物にレーザが当った最初のデータのみを摘出したデータです。
綺麗に手摺だけがデータとして摘出されています。

次にこれはラストエコーで、手摺をかすめたデータが堤体に当った物のみが摘出されています。
この2つは同一のレーザーから取得された2種類のエコーデータと言う事になります。

これは、ファーストエコーとラストエコーを一緒に表示した物になります。

これはシングルエコーで、1発照射したレーザで1つだけ反射してきた物になります。
一番信用度の高いデータと言う事になります。

これはファースト、ラスト、シングルを同時に表示した物です。
手摺とその裏の堤体が綺麗にデータとして取得できているのは、このマルチエコーによる物です。
この様な機能はリーグル社唯一無二の機能となり、データの扱い方のバリエーションが広がります。
それでは、このデータをスリット状に切り取って見るとどうなるでしょう?

これはファースト、ラスト、シングルを同時に表示しています。
X330では計測すらできなかった手摺ですが、VZ-1000では2本の横棒の様子までしっかりと計測できているのが見て取れると思います。
本来、堤体の壁面に点群が並ぶはずなのですが、白矢印の部分に数点イレギュラーなデータが有ります。
これはラストエコーのデータなのですが、レーザーが複数の物に当ると言う事は、レーザーのパワーもどんどん落ちながら反射すると言う事で、不安定なデータがノイズとして出ていると考えられます。

この様なデータを解析に使用しない為に、ラストエコーだけデータから抜いて作業を行う事が出来るのがVZ-1000ならではです。

これは反射強度を段彩表示した物です。
ターゲットの反射シートが貼り付けてある部分が赤くなっているのが解ると思います。
リーグル社のスキャナは、ソキア(トプコン)の反射シートターゲットを自動求心するので、反射シートの中心を測量しておけば、レーザースキャナのターゲットとして使用できるのも他社と違う所です。
90mm各の反射シートで、今までの経験として最長で800mまで認識するので、他社と比べロングレンジになればなる程、圧倒的に精度が担保されます。
通常のレーザースキャナでは、距離によって反射強度が減衰して行くので、遠くの物はどんどん反射強度が落ちて寒色系になって行くのが普通ですが、VZ-1000の反射強度は距離によって減衰しない様補正をかけるので、波形解析が可能となります。
この画像では、暖色系が反射強度が高く、寒色系が反射強度が弱いのですが、コンクリート構造物で反射強度の強い部分と弱い部分があると言うのは、色による反射率の違い、表面の性状による反射率の違いが考えられます。
表面の性状のよる反射率の違いと言うのは、骨材の露出や表面の湿潤状況、コケの繁殖等が考えられます。

RGBの点群画像と比較すると、黒い部分がすべて反射率が弱いと言う訳ではなさそうなので、表面の湿潤状態とコケ等の付着物が考えられます。
また、この応用として、露岩を計測する事で、花崗岩や泥岩等の反射率の違いによる岩種判定にも役立てる事が可能になります。
葉の反射率と土の反射率、木や枝の反射率も違うので、反射率の違いによってデータを間引いてやれば、地面だけを摘出するデータクリーニングが自動化する事も可能になります。
それがVZ-1000の波形解析なのです。
この様に、各社レーザースキャナを販売していますが、カタログでは表せないデータの取得状況や品質が有り、実際にそれらの特性を理解して計測、解析するのとしないのとでは、仕上がるデータのクヲリティーには雲泥の差が生まれて来ます。

地上型レーザースキャナを20年以上見続けてきて、現在4機のレーザースキャナを所有して計測を行っていますが、リーグル社のスキャナがいつも中心にあって、常にベンチマークになっているのは、それだけリーグル社のスキャナが優れている事を、現場での計測の実体験から感じているからです。
初代のLMS-Z420iが10年以上経った今でも現役で動いていると言う事だけでも、堅牢強固で些細な事でデータが劣化せず、性能的に現在でも通用すると言う証だと思います。
ただ、LMS-420iは40キロ以上あるので、もうこれを担いで山には登りたく無いですが、、、、、、